世の中、知らないことって多いものですね・・・。
ウナギに毒があるって、
皆さん知っていましたか?
私も家族も、全っ然知りませんでした・・・。
ウナギで思い出すのが、
私が通っていた大学近くにある定食屋さんです。
水槽の中にはいつもウナギが用意してあり、
それをさばいてくれていたんでしょう。
蒲焼がとてもおいしかったんです。
でも今だから思います・・・
結構大変だったんじゃないかなぁ。
ウナギの毒性について知らなかったということは、
普段の生活をしていれば安全なのかもしれません。
でも「ウナギ釣りをされる方」、
「ウナギを自分で捌きたいという方」、
要注意ですよ!
というわけで、今回はウナギの毒性についてのお話です。
目次
鰻と日本人
味にちょっとクセがあるので、
「ちょっと苦手だな」という方もいるかと思います。
でも鰻は高タンパクで消化も良い!
弱った体にはもってこいですね。
その鰻は
一体いつ頃から食されていたと思いますか?
食材ウナギの歴史
日本人とウナギの関係は、
思っていた以上に長いんですよ・・・。
というのも
実は約5000年前の縄文時代の貝塚で
ウナギの骨が出土しているんです!
う~ん、最初に食べようと思った人は、
ツワモノだなぁ・・・。
食材としてのウナギの歴史は
こんな感じでかなり遡るわけです。
『万葉集』(759年)では、
大伴家持さんが夏痩せした吉田連老という方に
「あなた痩せ過ぎちゃったから、ウナギでも食べて元気出しなよ。」と詠っています。
この頃既に滋養効果が認められていたんですね!
その頃は「ムナギ」と称されていました。
「胸が黄色いから」とか
「棟木に似ているから」など色々説はありますが、
ハッキリせず謎のまま・・・。
この頃の調理方法は白蒸しにして、塩味。
平安貴族が食す高級食材だったんです。
それが庶民の味になったのが、江戸時代。
縄文時代の調理方法は分かりませんが、
刺身の文化を持つ日本で
文献にその名が出た時には火を通していたということは、
毒があることを分かっていたのか、
単に泥臭さを隠すためだったのか。
今となっては分からないのがちょっと残念です。
要注意!鰻には毒がある!
その問題の毒についてですが、
思いがけないところに潜んでいます。
「やっぱり天然ウナギが一番!」
なんて釣りに行く方!
ウナギは釣りシーズンが4~10月と長く、
エサも難しくない!
更にウナギは夜行性なので、
日没後2~3時間が勝負!
そこで「仕事帰りにちょっと」という事もできます。
しかもおいしい!ときたら、
やっぱり挑戦したくなりますよね。
が!そんな時にご用心!!!
早速ウナギの毒の回避法を見てみましょう
鉄則その①、血液を飲んではいけない!
実はウナギの血液に毒成分が入ってるんです。
特定の名前はありませんが、
「魚類血清毒」というちょっとアバウトな
それでいて分かりやすい命名がされています。
タンパク質毒なのですが、
構造はこれまた謎なんですね。
はっきりした致死量も不明。
ただもし人とマウスの毒に対する感受性が同じ場合、
ウナギの新鮮な血液を60kgの人が1000ml飲むと
命を落とすかも!と見積もられています。
1000ml・・・1リットル・・・・
普通に飲む機会はないかと・・・。
ただしその量でなくても大量摂取した場合、
下痢、嘔吐、発疹、チアノーゼ、麻痺や呼吸困難等、
無事では済まないので決して口にしちゃダメですよ。
鉄則その②、素手で触る時は要注意!
うなぎを捌く機会というのも、
普段の生活の中ではそれ程多くはないかと思います。
しかしウナギ釣りが好きな方や
ウナギを捌く機会がある方、
ちょっと注意してください。
血液内の毒成分は
目や口、傷口から入っても局部的な炎症を引き起こします。
目に入った場合:
まず激しい灼熱感があり、
涙が止まらなくなります。
そして結膜炎、瞼の腫れ、異物感が数日続き、
最悪失明の可能性も!
口に入った場合:
激しい灼熱感に涎が大量に出ます。
粘膜の発赤もあり。
傷口に入った場合:
浮流や化膿、炎症を引き起こします。
どこに入っても、とにかく激痛だそうです。
素手で触る時には
手に傷口がないか確認した後、
飛んでくる血飛沫は避けて下さいね。
またアトピーなどがある方も
念のためゴム手袋をオススメします。
鉄則その③、火を通す
ウナギはタンパク質毒なので、
火を通すと完全に毒性が消えます。
60度の熱で5分以上加熱すると大丈夫です。
これに人の消化機能を加えると
毒の危険性は完全に消えますので
安心して下さい。
というわけで、
私のように加熱済みのものを買っている場合は
危険性はないわけなんですね。
だからウナギの毒を知らなかったんだろうな・・・。
血液は体中を巡っているいる液体なので、
完全に取り除くというのは難しいですよね。
ウナギのお刺身を食べてみたいという方、
ご家庭では挑戦しないことをオススメします。
ウナギのお刺身を出しているお店もあるようなので、
どうしても!という方はそちらへ。
鉄則その④、ウナギを触ったら手を洗うこと
ウナギ釣りをしない方でも、
ウナギ掴みに挑戦する方がいるかも。
「血液を触らなければ大丈夫かな」と思ってる方!
まだ安心はできませんよ。
ウナギを掴みにくくしているあの体表の粘液。
あそこにも毒が隠されているようです。
元々あのヌルヌルは保水性の高い
ムチンという成分の粘液なんですね。
ウナギはエラ呼吸だけでなく、
皮膚呼吸もでき、それが全呼吸の60%を占めています。
粘膜細胞から粘液を分泌することで、
水分を蓄え皮膚呼吸を可能にしているんです。
またこの粘液は浸透圧調整にも貢献しているんです。
浸透圧の違う海水と淡水を両方生きるウナギにとって
この粘膜は必要不可欠。
ただ捕まりにくくしているだけじゃないんです!
ところがここに血液中の毒性よりも
更に強い毒が潜んでいるんです。
実験では体表粘液から抽出した成分を静脈注射して、
毒性を確認したのですが、
経口摂取では大丈夫かもしれないということです。
でも手に傷があった場合、どうでしょう・・・。
まだ謎の多いウナギです。
ウナギを素手で触る方は、
やはり手に傷がないか確認し
触った後はきっちり手を洗いましょうね。
謎の多い魚、それが鰻
そうか・・・本当に毒があるんですね。
でもウナギに関して知られていないことは、
それだけではないんです。
長いこと共に生きてきたのに、
実は今でも謎が多いのが、このウナギ。
ウナギの特殊性
まず一番の謎が産卵に関してです。
長いことその過程が分からずにいました。
なにせ卵や幼魚を見たことがない!
「山芋変じてウナギと化す」
かつて人々は、
山芋がウナギになると信じていました。
なぜ山芋だったんでしょうね!?
長いから?
ヌルヌルするから?
でも数ある物の中から、
山芋を選んだ日本人のその感覚。
私、好きですね!
ちなみに古代ギリシャの哲学者アリストテレスは
「ウナギは泥の中から自然に発生する」
と言っていたらしいです。
相当謎だったんですね!
その謎を解くヒントが、
ウナギは純然たる淡水魚と見せかけて
実は生まれが海水ということ。
器用な生き物ですね!
「降河回遊」と言って、
海で産卵、その後淡水の方まで遡って来るわけです。
どおりで卵と幼魚が、
親のいる場所で見当たらないんだな。
産卵の謎に迫る
ウナギは繁殖の過程が謎だらけで、
今でも完全養殖が難しいくらい。
まず産卵地は日本を南に行くこと2200km。
水深200~300m位の場所で産卵をします。
その後水深160mくらいまで上ってくるのですが、
この付近は水温が急激に変化する場所。
この水温の変化が孵化には重要だと
結構前のテレビ番組で見た記憶があります。
簡単なようですが、
この水温の変化という自然を再現するのが
まずはとても難しいみたい。
1973年に人工孵化に成功し
2010年には完全養殖に成功はしたものの、
まだ実験室レベルの上
コストもかかる為実用化には程遠いようです。
2014年にはニホンウナギが絶滅危惧種に指定され
その漁獲量も1970年付近から下降の一途を辿っています。
そういった理由からも、
ウナギの研究が日本人にとって
どれだけ重要なのかがわかりますね。
やっぱりウナギが食べたい!
研究はまだまだ続きます。
まとめ
ウナギの毒性は血液中と体表粘液に潜んでいます。
釣りをしたり、捌いたり、
ウナギ掴みをするなど素手で触る方は要注意です!
当てはまる方!
以下のことに気をつけてくださいね。
- 血液を飲まない→血飛沫も避ける!
- 触る時には手に傷口がないか確認する
- 触ったら手を洗う
- 必ず火を通す
生身のウナギに接触する時に注意が必要ですが
毒性は加熱することで消えます。
でもこのウナギの毒は
アナフィラキシーショックの研究にも使用され
人類に大きく貢献してくれました。
この研究で1913年、
フランスの生理学者がノーベル賞を受賞しています。
ウナギは食材としてではなく、
色んな点で人類との歴史が厚いんですね。