世の中には、光を見ると、くしゃみが出るクセのある人が居るらしい。
テレビか何かで、聞いたことはあるくれど、自分自身は別にそんなクセは無い、と思っていました。
けれど、よく考えたら、「別に鼻がムズムズしたわけじゃないのに、唐突にくしゃみが出た」という経験はありました。
あれ? 私も実は「光を見るとくしゃみが出る」タイプの人?
無くて七癖、と昔の人は言ったわけで……。ちょっと調べてみた方が良さそうです。
なぜ光を見るとくしゃみが出るの?
光を見るとくしゃみが出るクセのことを、「光くしゃみ反射」と言います。
生理的な反射運動であると考えられていますが、全人類に備わった反射運動ではなく、日本人ではおよそ25%の人に見られるそうです。
一説には、優性遺伝子によって引き起こされる反射運動だと考えられています。
夫婦のどちらかに光くしゃみ反射があれば、その子供も、光くしゃみ反射を起こす可能性が高いのです。
なぜ光くしゃみ反射が起こるのか、そのメカニズムは、実はまだ解明されていません。
ただ、「ネコの光くしゃみ反射」に対する研究では、脳の作りに原因があると分かっています。
ネコの中脳にある対光反射の中枢から出た神経突起が、虹彩の瞳孔括約筋(瞳を小さくする筋肉)を調節する神経細胞だけではなく、鼻汁分泌を調節する神経細胞(翼口蓋神経)にも到達しているため、光に対する反応が、目だけでなく鼻水にも表れるのです。
何が何だかサッパリですね。
分かりやすく、家電のタコ足配線で例えましょう。
・お部屋の電源ソケットを、「脳の中にある、光の眩しさに反応する機能」
・タコ足ケーブルを「脳の神経の繋がり」
とします。
そのタコ足ケーブルには、
・卓上電灯「目(瞳孔)を調節する機能」
・加湿器「鼻水を出す機能」
が一緒に繋がれています。
タコ足ケーブルを、お部屋の電源ソケットに差すと、タコ足に繋がっている家電が、一斉にスイッチONになりますよね。
必ず一緒に使うわけでも無い2つの家電が、なぜか同じきっかけでスイッチONになってしまう。
それが、「ネコの光くしゃみ反射」です。
同じ哺乳類ですから、たぶん、人間も同じ原因で「光くしゃみ反射」を起こしているのではないでしょうか。
ネコの場合、光くしゃみ反射がある個体は、全体の10%程度だそうです。
ごく少数のネコ(と人間)だけ、脳の仕組みがちょっと違う、というのは、なんだかSFじみているように思います。
が、神経や筋がちょっとだけ余分・少ない、というのは、医学的にも「わりとよく見る」個性だそうです。
医療ドラマで「この患者は血管の配置が普通ではない、手術が難しい」なんてパターンをよく見ますが、同じことが脳の中でもあり得るんですね。
進化学的には、こういう個性はちょっとした先祖返り、と考えられています。
トリガーは人それぞれ
どんな光に反応するのか、どのくらいの眩しさに反応するのか、は、人それぞれに違うそうです。
真夏の太陽を直視するくらいの眩しさで初めてくしゃみする人も居れば、室内灯のスイッチを点けるだけでくしゃみをする人もいます。
ただ、「一瞬の眩しさに対する反応なので、くしゃみは長続きしない」という傾向はあります。
鼻がムズムズしたときのくしゃみは、なかなか止まなかったり、しばらく「ふぁ、ふぁ……」ともたついてから「ふぁっくしょん!」となったりします。
けれど、光くしゃみ反射は、ぱっとくしゃみしてぱっと止むものです。
対策方法を考える
たかがくしゃみ、されどくしゃみ。
トンネル出口付近での交通事故、飛行機同士の空中接触事故は、光くしゃみ反射による一瞬の隙が原因ではないか、と考えられています。
車を運転する方にとっては、結構深刻な問題です。
しかし、原因が「脳の都合」とあっては、根本的な対策はできません。
せいぜい、眩しくないようにサングラスをつけること、ぐらいでしょうか。
でも人間には、ネコと違って知恵と技術があります。
まず、自分の光くしゃみ反射が、「どのくらいの眩しさに反応するのか」把握しましょう。
光くしゃみ反射の程度が把握できれば、サングラスの濃さを検討したり、トンネルを出る少し前からサンバイザーの用意をしたり、対策が取れます。
くしゃみが出るな、という心の準備だけでも、ハンドル操作の狂いを予防するには大切です。
まとめ
・光くしゃみ反射は、まだきちんと解明されていない。
・ネコに対する研究では、神経細胞の接続の都合で、眩しさへの反応が目と鼻水に同時に出る。
・反応する眩しさの程度は、人それぞれ。
・トンネル出口での事故を防ぐために、自分に合ったサングラス、サンバイザーを用意しよう。