ある団体でマナー講師として活動しているのですが、先日その定例会がありました。いつものように穏やかに定例会が終わり、「では、お食事でも。」となり、会場近くのカジュアルなレストランに入りました。
マナー講師同士はお互いを「○○先生」と呼び合うのに、いまだ慣れないのですが…まあ、穏やかにお食事をみんなで楽しんでいました。すると、バイトを終わったと思われる学生さんらしき男性が、あきらかに彼よりは年上であろう人に、「お先っす。お疲れ様です。」と言って帰ったのが、先生たちの耳に届いてしまったのです。
それと同時に、同席していた講師の先生たちの目が「キッ。(キラッ)」となり、チェックが入ったのでした。先生たち、厳しい!
というわけで今回は、目上の人に対して「お疲れ様です」はアリなのかナシなのか、徹底的に見ていきたいと思います。
一部で失礼という風潮はあった。そもそも疲れていない…
数年前にタモリさん発信で盛り上がった「お疲れ様」問題です。その時にタモリさんは、“最近の子役たちが目上の人にも「お疲れ様です(でした)」と言って帰るのはおかしい”みたいな内容で指摘していたと思います。
一般的には、“「ご苦労様」を目上の人に使うのは失礼、目上から目下への「ご苦労様」はOK、「お疲れ様」は目上でも同僚でも大丈夫”です。ビジネスマナーでもソーシャルマナーでも、みなさんそう教えられたのではないでしょうか?
タモリさんの指摘ですが、要は「勝手に疲れていると決めるでない!」とか、もしそれが午前中だとしたら「そんな早い時間から疲れないわい!」となるのかも知れません。
しかも、「目下の人が目上の人の疲れを決めるんじゃない!」っていうのもあるかも知れません。
タモリさんのおっしゃることもわかりますよね。
そして、確かに、以前は「お疲れ様です」は目上にも使うのは失礼との風潮があったのです。
今は「お疲れ様です」は目上に使ってもOK!
厳密な言葉の意味で言えば、「お疲れ様」は難しいところですが、言語は日々変化するものです。
今では、相手へ気を使っての挨拶として「お疲れ様」は目上にでも同僚にでも使って問題ナシの挨拶です。これはその場にいたマナー講師の先生、満場一致の意見です。
会社での退社時はもちろん、すれ違う時やひと仕事終えた時、メールや電話での挨拶にも使えます。
「お疲れ様です」を目上に使う時の大前提!
では、どうしてバイトくんの「お疲れ様」の言葉に、先生方は反応したのでしょうか?
「お疲れ様」を使うには、大前提が2つあります。
- 社内での挨拶の言葉である
- アリとはいえ、相手とシーンを考えて使うべき
ついつい、取引先にも「お疲れ様です」と声を掛けてしまうことがありますが、基本的には社内の言葉と認識しておきましょう。本当に近しい取引先の人であればアリなのかも知れません。でも、使う時には相手の立場や状況に配慮を!
そして、これがマナー講師の先生の目が光った理由なのです。“接客業なのに、お客様の耳に届くところで「お疲れ様です」はナシでしょう?!”というワケです。社内では同僚のことを「Aくん」と呼んでいても、社外の人との会話では「弊社のA」とか「A」と言い換えますよね。それと同じことです。
そして②については、ビジネスパーソンとしての配慮の問題と言えます。アリとは言え、上司には使わない方が無難というのが本当のところです。「お疲れ様です」はねぎらいの言葉なので、部下からこの言葉をかけられるのが気になる上司もいるのです。ご年配の方ならなおさらですよ。
「わかってるけど…じゃーなんて言えばいいの?」っていう話になりますよね。「お疲れ様です」の代わりの言葉がないないから使ってるという人も多いです。
「お疲れ様です」回避フレーズ
「お疲れ様」は相手をねぎらう言葉なので、別な言葉でねぎらいの気持ちを表せばいいのです。難しく考える必要はありません。
■退社の時
(自分が先に帰る場合)「お先に失礼します」
(相手が先に帰る場合)「明日もお願いします」「今日は○○ありがとうございます」
■すれ違う時
「おはようございます」「こんにちは」「忙しいですか?お互い頑張りましょう」
■ひと仕事終えた時
「ありがとうございます」「また次回もよろしくお願いします」
■メールや電話での挨拶に
「いつもお世話になっております」「いつもアドバイスをいただき、ありがとうございます」
などなど、シーンに合わせて使ってみてください。「(今日は○○をしていただき)ありがとうございます」「こんにちは」などは置き換えやすいので、この2つの挨拶から始めるのがいいかも知れません。
まとめ
いかがでしたか?日々変化する言語ですが、変化しつつあるからこそ人によって受け取り方や考え方に違いがあるのを忘れないことが大切ですね。
まとめると…
- “「ご苦労さま」を目上の人に使うのは失礼、目上から目下への「ご苦労様」はOK、「お疲れ様」は目上でも同僚でも大丈夫”
- しかし、①社内での挨拶の言葉である、②アリとはいえ、相手とシーンを考えて使うべき
- 代わりに「ありがとうございます」「こんにちは」で「お疲れさまです」を回避してみては?
この日、帰りの先生がた(みなさん先輩なので)への挨拶は、「次回の定例会の時もよろしくお願いいたします。失礼いたします。」と帰ってきました。この会話の後の帰り際、その日一番緊張しました。