先日、姪っ子ちゃん姉妹にカニクリームコロッケを作ってあげた時の話です。
このコロッケもおいしいけど、蟹は足がついてるのをとって食べたいよね。」と、なかなかゴージャスなことを言う姉。
すると、「どうしてあんなに面倒くさいのがいいの? 誰かがとってくれたほうがいいよ。」という姫な妹。
そして、「しかも、蟹って蜘蛛っぽい。」と。蜘蛛が苦手な妹なのです。
そこで、ちょっと意地悪なおばゴコロで「だいたい一緒かもよー。しかもね、クモガニっていう蟹もいるんだよー。」なんて言ってみたら、「きゃー、気持ち悪い!」と思った通りの反応で満足しました。
姉は「蜘蛛と蟹が一緒なわけないよ。」、妹は「クモガニおいしい?」とデザートを食べながら楽しい時間。
本当に蜘蛛と蟹、一緒だと思いますか? クモガニって美味しそうな名前ですか?
巷で蜘蛛と蟹が一緒と言われる2つのワケ
サイズも硬さも住んでいる場所も全く違う蜘蛛と蟹なのに、どうして一緒にされるんでしょうか?
蜘蛛は足が8本で、蟹もハサミをいれたら足が8本なところくらいしか似てないはずなのに。
しかも、蟹の中でもタラバガニ、花咲ガニ、ヤシガニは足が6本です。正確には、同じ数とは言えませんよね。
タラバガニや花咲ガニは、味はカニだけど、生物学的には「ヤドカリ科」になります。
実は、「カブトガニが蜘蛛に近い」と言われています。カブトガニは、お椀みたいな丸っこいボディーにとがった長いしっぽみたいなものを持つ、蟹らしくないルックスです。でも、これが一番の「蜘蛛と蟹は一緒」って言われる理由じゃないかと思います。
「蜘蛛とカブトガニは近い」っていう文の「カブト」が伝わってる途中に、どこかで落ちちゃって、「近い」が「一緒」になっちゃたんでしょうね。「近い」と「一緒」では、意味にだいぶ違いがあります。
もうひとつのワケは、ズワイガニやタカアシガニは「クモガニ科」に分類されるので、この分類名がひとり歩きしちゃった?と勝手に思ってます。
「蜘蛛的な蟹です」みたいな理解になってしまったんでしょうね。
クモガニと訳される蟹がいる
○○科の○○は、だいたいの場合には実際にいるものの名前が入るんですが、クモガニっていう蟹もいるんです。
イタリアのヴェネチアでは、代表的な食材でイタリア語では「グランセオラ」といいます。
見た目は、毛ガニほどではないけど短くて細い毛に覆われていて、やや長めの足なんですが、タラバガニほどではありません。
ヴェネチア料理では、「Granseola alla veneziana」ヴェネチア風グランセオラっていう、そのままの名前で、よくコースの2皿目で出てきます。
まるごと茹でて、甲羅にほぐした身が盛り付けられます。身はオリーブオイル、レモン、塩こしょうで味付けされた、いたってシンプルな料理。足もついた、いかにも蟹的なビジュアルでも蜘蛛的なビジュアルでもないんです。
カフェでは、サンドウィッチでグランセオラ=クモガニを出すところもあります。日本語メニューに、「クモガニサンドウィッチ」って訳されてたら、食欲がなくなっちゃいそうですが…。
「クモガニ」っていう名前は、やっぱり「クモ」+「カニ」って頭の中で変換しちゃいますね。
でも、「クモガニ」は実際にいる蟹の種類で、そこは「クモ」と「カニ」に分解しちゃいけません。
蜘蛛と蟹の共通点…「節足動物」
蜘蛛と蟹が同じかも?と思われる唯一の要素には、足の数は別として「節足動物」というところ。
でもね、節足動物だから同じと言ってしまうと、「脊椎動物」である人間、マグロ、カエル、ゾウなんかも一緒って言ってるのと同じになってしまうのです。
これはさすがに「一緒」の一言で済ますには、範囲が広すぎやありませんか?
蜘蛛と蟹は一緒とは言えないんじゃないかな?と思う私の考えが狭すぎるのでしょうか…。
まとめ
安心してください。蜘蛛と蟹は一緒じゃありません。クモガニはいますけど。
まとめると…
・巷のウワサ:蜘蛛と蟹が一緒と言われてしまうワケ
→カブトガニは蜘蛛に近いという事実があるから
→ズワイガニやタカアシガニは「クモガニ科」だから。
・でもクモガニは実際にいる種類で、「クモ」+「カニ」ではない。
・「蜘蛛と蟹は節足動物だから一緒」と言ってしまうと、「人間とマグロは脊椎動物だから一緒」となってしまいますが…
我が家の姪っ子ちゃんたちは、グランセオラが食べてみたいそうです。蜘蛛と蟹の件はどうでもいいんでしょうか…