ビジネスメールで目にする、「ご査収下さい」「検収お願いします」の言葉。
この二つの言葉は、実は、「ふさわしいシーン」が大きく違います。
間違って使ってしまうと、受け手が困惑してしまうことになるかもしれません。
ややこしいと感じるかもしれませんが、この二つの言葉が使いこなせたら、ビジネスマンとしてワンランク上に見られますよ。
お取引先と良い関係を築くために、小さなところから勉強していきましょう!
「ご査収下さい」とは
査収(「さしゅう」と読みます)の査は、査読の「査」。
「書類の中に書いてある情報が、間違い無いか確認して下さい」というのが、正しい意味です。
例文は、
「添付したテキストをご査収下さい」。
データ・文章などの情報を、やり取りするときに使います。
注意するのは、「査収」を使う対象は情報。つまり「テキストの中身」であること。
パンフレットに載せるための原稿を送るときは「ご査収下さい」。
刷り上がったパンフレットを、配達するときは、後に説明する「検収願います」を使うのが正しいです。
「情報」を拡大解釈して、プログラマーさんが納品するときに「プログラムに書き間違い(バグ)が無いか確かめて、ご納入下さい」という意味で「ご査収下さい」と言うことも多いそうです。
データ入力、音声の文字起こし、文筆業などなどの方は、ぜひ覚えたい一言です。
「検収お願いします」とは
検収は、物品を渡す際に、「品質・数に間違いが無いか確かめて下さい」と言い添える言葉です。
「査収」との大きな違いは、「査収」は物としての実体が無いデーターにも使うのに対し、「検収」は物体にのみ使うという点。
工場や流通業で、よく使う言葉になります。
小売業など、物品の受け手は、たいてい、業務として「検品」をしていますよね。
部品にしろ食品にしろ、生産には時間がかかります。納品した数が足りないとなると、「生産段階で足りなかったか」「流通の間に無くしたのか」「受け取り手が誤魔化していないか」、責任の所在が死活問題です。
「こちらでも確認しましたけど、そちらでもちゃんと検品して下さいね。間違い無く納品しましたからね」
という含みを持たせられるのが、「検収願います」の一言です。
使い分けに自信が無いときは
ちなみに、「ご査収下さい」「検収願います」を使い分けずに済む、魔法の一言があります。
「内容をご確認ください」だけで、データでも物でも、十分に伝わります。便利ですね。
しかし、メールでは、簡潔で読みやすさを追求した文面が求められます。深い意味を持った「査収」「検収」が使えると、すっきりシンプルな文面が書けますよ。
「お納め下さい」の裏
「ご査収」「検収」よりも、出くわす機会の多いのが「お納め下さい」の一言。
上記二つの言葉とは違い、「そのまま受け取ること」を意味します。
普段の取引では、あまり気にすることはありませんが、時代劇などでは中々含みのある使い方をされています。
悪徳商人が、悪代官に菓子折を差し出して、「つまらないものですが、お納め下さい」と言うシーン。
深読みすれば、「菓子折の中には小判が詰まっているのは明白ですが、検収なんてヤボはせずに、このまま受け取って下さいな」というセリフになります。
時代劇のお約束、もはやギャグ扱いされることもあるシーンですが、「お納め下さい」の意味を知ると、ちょっと恐ろしさがありませんか?
更に、悪代官は「お納め下さい」を無視して、その場で山吹色のお菓子を取り出してみせ、「お主も悪よのぅ」と笑うのです。
「悪徳商人は信用ならない人物だから、わざわざ検収した上で受け取ってやる」という牽制の一手です。
一介の商人に、おだてられて良いようにされるんじゃない。悪代官にも計算があってのことだ、と主張する、意地にも見えます。
おお恐い。商売は正直にやりたいものです。
まとめ
・「査収」は、データや文章の内容(情報)に間違いが無いか確認の上、受け取って欲しい、という意味。形の無いデータやプログラムにも使う。
・プログラムは、情報の中身=製品なので、納品時に「ご査収下さい」を使うことも多い。
・「検収」は、物品の品質・数を確認した上で、受け取って欲しい、という意味。実体のある物に使う。受け取り側が「検品」するものには「検収」を使う。
・使い分ける自信が無いときは、「ご確認ください」で十分。
・「お納め下さい」は、「どうかそのまま、確認せず受け取って欲しい」という意味にも取れる。商売は正直にやりましょう。