貴社と御社って似てるけど違いはあるの? 意味や使い方は?

ビジネスマナーでよく話題に上がる、「貴社と御社の使い分け」。

使い分けるほどの違いがあるの?

どう使い分ければ良いの?

どうして使い分けなければいけないの?

数々の、素朴な疑問にお答えします。

貴社と御社の使い分け

ハッキリ言って、貴社と御社は同じ意味の言葉です。

相手の会社に対し、敬意を示す呼び方です。

「貴」をつける敬称は、「貴公」「貴方」「貴殿」などがありますね。
基本的に、「貴」の字は人間相手に使うものです。

「御」をつける敬称は、「御味噌汁」「御天道様」「御稲荷様」「御主人」「御担当者様」などがあります。
人にも者にも神様にも使える、万能な敬称です。

 

人に使う「貴」を、会社につけるのは、ちょっと珍しい用法かもしれません。

けれどビジネスシーンの実際としては、会社組織丸ごとを相手にする、というより、
「この書類を受け取った担当者」「目の前の交渉相手」とやり取りするものです。

あやふやな「そちら」程度の括りで、「貴社」と言うのかもしれませんね。

 

世のビジネスマナー本では、「貴社」は書き言葉、「御社」は話し言葉で使うもの、としています。

そもそも貴社と御社を使い分ける理由

「貴社」を書き言葉とする理由は、「同音異義語があるので、誤解を招かないため」だそうです。

「貴社」の同音異義語には、「帰社」「汽車」があります。
そこまで気を使わなくても、普通に文脈で分かる気もしますが、
話し言葉で使わないに越したことはない、ということです。

 

一方、「御社」を話し言葉に限定する理由は、特にありません。

ただ、文章や会話の中で、二人称を統一しないのはおかしいので、
作文の中に一回「貴社」と書いていたら、その続きの文章は「貴社」に統一し、「御社」を使うべきではありません。

「いちいち使い分ける手間を思えば、
話すのも書くのも全部「御社」だけで統一するのが一番」という意見もあります。

不思議なビジネスルール

日本のビジネス界で、「株式会社」や「有限会社」が登場したのは、日本全体の歴史から見ればごく最近です。

第二次世界大戦以前には、衣料品店も食料品店も個人のお店が多く、
「法人化していないお店」は、厳密には「御社」とは呼びません。
江戸時代には「会社」という概念さえありませんでした。

明治維新からの開国、そして高度経済成長で、
ビジネスのありかたが大きく変わるのに合わせて、
無理やりひねり出されたのが、現在の日本のビジネスルールです。

 

例えば「判子」。江戸時代は、判子は誰もが持っているものではありませんでした。

江戸時代、判子は主に、公からの許可証に用いるものでした。

手紙や契約書には普通、直筆サインで「個人承認」とし、重要な書類には拇印を押しました。

筆跡や指紋に比べて、判子は偽造がしやすく、
簡単に盗めるものでもあるので、書類にハンコを押すのは合理的なルールとは言えません。

ただ、サインするよりも圧倒的に楽なので、
「明治政府は書類仕事が多かったので、楽をするために判子を使うことにした」というウワサもあります。

 

判子を使うビジネスルールが、上のように新しいものなので、
「判子を傾けて押して、お辞儀を示す」というのも、別に歴史も根拠も無いルールです。

江戸時代の、公の許可証のための判子は、
真っすぐ綺麗に押すのが基本です(現在も実印は真っすぐ押しますね)。

判子を傾けて押す、という発想は、判子の価値を下げているとも言えます。

 

サラリーマンはスーツを着なければならない、というルールも、明治維新からできました。

明治維新後、「公的な場では洋装するべし」「和服はなるべく着ない」といったお触れが出され、
チョンマゲを切り、大臣は軍服や燕尾服を着るようになりました。

お上からの圧力も勿論、相手のことを思えば、
外国と取引するときには和服より洋服の方が間違いが無い、ということで、
西洋のサラリーマンの服装を基準としたのが、日本のスーツ事情の始まりでした。

 

西洋の国と並び立つのに必要だったものから、とりあえず間に合わせにしたもの、
江戸時代とは気分を変えたかったこと、利権の絡むこと等など、決して、合理的で、自然なものとは言えません。

しかし、今のところ、現在のビジネスルールに則ってビジネスマンを評価する人事が一般的なので、
あまりロックな主張を行うことはやめておきましょう。

まとめ

・貴社と御社の意味は同じ。

・貴社は同音異義語があるため、書き言葉で使うものとされている。

・面倒なら全て「御社」で通せば良い。

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