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退社と退職の違いや対義語とは?漢字の成り立ちで理解する

「退社」と「退職」。二字熟語のうち片方は同じ文字でありますが、その意味は大きく違います。

私たちが当たり前に使っている、漢字。文章の長さとしては短く済み、文字の作りとしては非常に複雑な、漢字。

当たり前のことを改めてじっくり考えると、歴史の深淵が見えてきます。

楽しく頭の体操と参りましょう。

表音文字、表意文字、表語文字の違い

世界中の言語の文字は、表音文字、表意文字、表語文字に分類されます。

表音文字は、言語の発音を表した文字体系のこと。話し言葉の通りに文字を並べて、一つの単語を作ります。

表意文字は、簡単に言えば、絵文字のことです。物や事を簡単なイラスト化し、話し言葉の発音とは無関係に書き表します。
表音文字では長ーい単語になりがちですが、表意文字は動詞も名詞もマーク一つで済みます。
古代エジプト文字やトンパ文字が有名です。

表意文字は、ある程度、文字の背景を知っていれば、外国人でも扱いやすいのが特徴です。
普段から私たちが使っている、数学の記号(+ - = 1 2 % など)も表意文字。
英語や中国語や日本語で、それぞれ独自の発音をで呼びながら、大変お世話になっております。

漢字は、表語文字に分類されます。

表音文字とは

世界的に広く使われている、表音文字について。

表音文字の代表格は、アルファベット。

英語のABCはもちろん有名ですね。「fの発音、thの発音」と聞いて、嫌な思い出が蘇る方も多いことでしょう。

アルファベットは、一文字づつが、
「母音」「子音」、「舌を鳴らす音」「唇を一瞬閉じる」などの発音を指定しており、
組み合わせて単語を作っていますね。(長い歴史の中で発音が省略され、アルファベット表記と実際の発音が違う単語もありますが……)

また、ドイツ、ロシア、イタリアなど、ヨーロッパ周辺の言語は、
他国には無い発音を表記するために、それぞれ少しずつ変化した独自のアルファベットを使っています。

 

ハングル文字は、漢字に似た見た目ですが、表音文字です。
ハングルの一字ずつを形成する、レ点・口・-・|の形が発音を表しています。
英語が横に長い単語、ハングルは四角に固めた単語、というイメージです。

 

日本語のひらがな・カタカナも、表音文字です。
漢字だけでは対応しきれない日本語の発音・文法を補うために、似た発音の漢字を当てたのが始まりです。

表語文字とは

表音文字と表意文字は、音←→意味、と対をなす単語ですね。

表語文字とは、その両方の要素を持つ文字です。

表語文字は種類が少なく、現在は漢字(中国語)しか使われていないそうです。

 

音と意味の両方の意味を持つ例は、表語の「語」が分かりやすいです。

左側の「へん」が「言葉に関わる」という意味を表し、右側の「つくり」は「吾」の漢字を当てて、発音を表しています。

 

更に、日本で独自の漢字を作ったケースもあります。その場合、音だけを表した単語や、意味だけを表した単語もあります。

中国には無い、日本独自の動植物を名付けたものもあれば、哲学などのヨーロッパ思想を日本語化するために作られた熟語など、その由来は様々。

外国を漢字で表す「亜爾然丁(アルゼンチン)」は、音だけを表したもの。当て字、とも言いますね。

「自由」は明治維新以降に、ヨーロッパからもたらされた思想を日本語化したもの。英語発音に習うなら「仏利伊打務」とでもするべきですが、意味を重視して漢字を選び、日本語の読みを当てて「ジユウ」となりました。

表意文字は、宇宙の物事全てに一つずつ、文字(又は熟語)が作られます。

日本語の場合、動植物の名前には、漢字の意味を重視した表記と、日本語の発音に当て字した表記の2種類があることも……!

退社の意味とは

ここまできたら蛇足でしょうか。「退社」の意味を考えていきましょう。

「退」は道を戻る意味、「社」は建物を示しています。

建物から、家に戻る、という意味ですね。

なお、現在の中国語では、「家に戻る」のは「回家」と書きます。

退社の対義語は、「出社」です。

退職の意味とは

退職の「退」は、退く、の意味。「職」は仕事・役目の意味です。

「辞職」と似ていますが、「辞職」は任期中に自ら辞めること、「退職」は任期満了で役目を終えることを指します。

ここの「退」が辿っている「之」は、物理的なものではなく、時間の流れなのですね。

抽象的な物事を形にして捉えるのは、表意文字と表語文字の特権です。

対義語は、「就職」。

まとめ

・漢字は表語文字に分類され、一字ごとに発音と意味の両方を表している。

・日本語の場合、漢字の意味を重視して使うこともあれば、日本語に当て字して使うこともある。

・退社と退職は、「退」の意味の捉え方が違う。表語文字の含む「意味」は抽象的な物事もある。

カテゴリ: 雑学