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猫に迫るマグロ刺身の危険 ! おねだりにも屈しない鬼の心が必要?

しまった!あげちゃってました!

「猫には魚だよね」なんて、
ルンルンしながらマグロの刺身を!

と言っても、それももうだいぶ前のこと。

今は亡き私の猫のお話です。

私の猫は眉間に入った2本の縦じまのせいで
いつも不機嫌そうな顔をした男の子でした。

でも本当は甘えん坊のクセに不器用さんで
かわいい子だったんですよ。

ただどうも魚より鶏肉の方が好きで
お刺身も反応が微妙なため、あげても少量で1年に3回位。

危なかった・・・。
おねだりされてたら、もっとあげてたかも・・・。

今回は「猫に迫るマグロのお刺身の危険性」についてのお話です。

私同様「しまった!」と思った方、
お刺身をあげようか迷ってる方、必見ですよ!

マグロの刺身って危険なの?

なぜマグロの刺身が怖いのでしょう?

それはね、
マグロの刺身を食べ過ぎることで起こる
病気があるからなんですよ。

有名なのがイエローファットです。

イエローファットという病気

どんな病気か簡単に言うと、
腹部辺りの皮下脂肪が酸化して
炎症を引き起こしてるんです。

ほら、下っ腹のちょっとタルんだところ。
私も思わずタプタプして、
うちの猫によく怒られてたなぁ。

あの辺りがしこりになってしまうんです。

それだけでなく炎症による発熱をしたり
歩き方がちょっとおかしくなったり
腹部を触られるのを嫌がったり。

放置してもよくはならないため、
ちょっとでもおかしいなと思ったら
必ず獣医さんに受診して下さい。

まずしこりの炎症を抑えるなどの対処療法と
フードの切り替えなど食事療法の同時進行になると思います。

イエローファットはなぜ起こる?

たんぱく質、脂質、ビタミン、炭水化物、ミネラル。
これらは人間の生命維持に必要な5大栄養素です。

実はこれって猫にとっても必要なものなんです。

ここでスポットを当てたいのが、
マグロの中に多く含まれている不飽和脂肪酸という脂質。

常温で固まりにくいので体内では液体です。
血中のコレステロール値や中性脂肪を調整する働きがあるので
少量だと猫にとっても有益な成分なんですね。

DHAもこの脂質の一種なんですよ!

ところが厄介なのは、多く摂りすぎた時。

不飽和脂肪酸の悲劇

不飽和脂肪酸は酸化して、
「過酸化脂質」になり易い性質があるんです。

ほら、体の細胞って酸素によって働いているでしょう?

というわけで、
体内に蓄積されたこの成分は
常に酸化作用に晒されているので、
どうしてもこれは避けられないわけです。

肺からとり入れられた酸素は、
肺を覆う血管を流れる血液中の赤血球にくっついて
全身の細胞に運ばれます。

細胞はそれで栄養分を分解して、
エネルギーを生み出すわけ。

そして内臓や筋肉、脳などの働きを活性化させるんですね。

この「代謝」と呼ばれる
不可避的な生体活動によって
思わず酸化してしまうんです。

脂肪ってきれいな白色をしていますよね。
ところがこれが酸化すると、黄色に変色。

だからイエローファット。

活性酸素の悲劇

代謝の過程で必ず生まれるのが、
この「活性酸素」。

体に取り入れられた酸素の2~3%が
この活性酸素となるそうです。

何となく活性酸素には悪いイメージがあります
適量であれば体内へ入った細菌を
免疫機能の1部として攻撃したり、
酵素の働きを促進するという役割があるんです。

が!これもまた増えすぎると、
皆さんご存知の「悪の活性酸素」
という側面が出て来ちゃうわけです。

過ぎたるは及ばざるが如し・・・
何でも適量がよろしいようで・・・。

この活性酸素が過酸化脂質と結びつくと
「連鎖的脂質過酸化反応」を引き起こすんです!

読んで字の如し!
脂質の酸化が連鎖的に起こる
=イエローファットがどんどん広がっていくんです!

イエローファットは別名「汎脂肪組織炎」。

「広くゆきわたる」
という意味のある「汎」が使われているのは
この性質があるからなんだろうな、と勝手に納得しました。

黄色い脂肪の部分が増えていく・・・
想像しただけでもドキドキしますよね。

イエローファットは放置しておくと死に至ります

受診した場合にも回復までには数週間から長くて数ヵ月。
なかなか手強いので予防を心掛けたいですね。

マグロの刺身に含まれる栄養性の病気

マグロの刺身を食べ過ぎると
栄養性の問題が2つ出てきます。

それがビタミンEとビタミンB1の欠乏です。

ビタミンEの欠乏

ここでビタミンEの働きをちょっとおさらい。
このビタミンには抗酸化作用があります。

そう、酸化作用を防いでくれる救世主なんです!

今回のマグロ刺身の案件で、
ビタミンEに望める可能性その①
不飽和脂肪酸が過酸化脂質になるのを防いでくれます。
やっぱり救世主です!

ビタミンEに望める可能性その②
まず活性酸素と結びつきます。
すると、アラ不思議 !

活性酸素の影響を無害化してくれるのです。

これで脂質の過酸化反応の連鎖を
断ち切ってくれるわけなんですね。

が!

鶏肉や牛肉にはこのビタミンEが含まれているのですが
残念ながらマグロにはあまり望めない成分なんですね。

よく見るとマグロ味の猫のエサには
ビタミンEが入っているのはそのためです。

そのためマグロだけを食べ続けると
ビタミンEが欠乏し、イエローファットの進行へ。

そして1度酸化した脂肪は、
周りの脂肪も巻き込んでどんどん酸化させていくんです。

また鮮度の悪いお刺身は、
脂肪の酸化も進みやすいようなので、その点も要注意ですね。

ビタミンB1欠乏

もう1つ心配なのが、ビタミンB1の欠乏ですね。

ビタミンB1は元々水溶性で体外に排出されちゃうんで
割と毎日摂りたいところです。

ビタミンB1欠乏のメカニズム

ビタミンB1と言えば、
炭水化物の代謝に深く関わっているわけですが、
猫って「真性肉食動物」と言って、本当に肉食なんです。

だからタンパク質や脂質からエネルギーを作るので
人のように炭水化物を消化、吸収する必要性があまりないわけです。

体の構造も腸が短く、
穀物類の消化、吸収に向いてないんですね。

だから逆に炭水化物を消化する時、
猫は人間よりも6~7倍の量のビタミンB1を必要とするんです。

が!

実は猫のカリカリには炭水化物が含まれているんですね。

その分ビタミンB1が添加されているはずですが、
体質上猫はビタミンB1が欠乏しやすい!

それに加えて生食の魚介類には、
チアミナーゼというビタミンB1を分解する酵素が含まれています。

というわけで、マグロの刺身を多量に食べちゃうと
ビタミンB1が破壊され大欠乏状態になるんですね !

チアミナーゼ自体は熱に弱いので、
本当はお刺身ではなく火を通して欲しいところです。

ビタミンB1が欠乏すると・・・

初期症状は軽い食欲不振、吐き気という、
ちょっと分かりにくいところから始まります。

ただ進行してくると、
歩行失調だったり、目の瞳孔が開いてきたりと
神経症状が見られてくるんですね。

そして心機失調や痙攣、麻痺を起こし、
長期化すると昏睡状態に陥ります。
そして死に至ることも・・・。

あれ、それって人間で言う脚気?

こちらの治療法は兎に角ビタミンB1を投与です。

初期症状が食欲不振という
それ程特異なものではないため
見逃してしまいがちですが、
重症化する前に異変に気づくことが大切ですね。

猫にマグロの刺身を与えるその他の心配事

お刺身は言わずと知れた生食です。
そこで出てくる心配事が、寄生虫。

お刺身用の魚介類を扱っているところであれば
細心の注意を払ってくれているとは思いますが、

それでも時々一緒にパック詰めされちゃうのが、
この厄介な寄生虫です。

ちっちゃいからね・・・。

猫も寄生虫が原因で死に至るケースもあります。

それから食物連鎖の上位であればある程、
気になるのが水銀の含有量。

マグロって、
なかなか食物連鎖の上の方ですよね・・・。
そうすると水銀の含有量も多いんです。

脳へ障害を与える水銀中毒は、
猫にも起こることなのでやはり気をつけたいですね。

寄生虫にしても水銀にしても、
人間よりも小さな体をしている猫にとっては
致命的な場合もあります。

あげる量には注意が必要!

何だかこうやって見ていくと、
サザエさんに追い駆られていた
お魚くわえたドラ猫君が心配になります。

ドラ猫君、魚を多量に食べ過ぎていませんように・・・。

猫にマグロは実際どの量だったらOK?

猫の飼い主さんにとって気になるのは、
あげてもよいマグロの刺身の量ではないでしょうか。

飼い主さんの匙加減

「全くあげてはいけない !」という意見もあれば、
「サプリを使用しながらならOK」という方や
「それ程頻繁でなければ大丈夫!」という方もいます。

実際ハッキリした「この分量」っていうのは
残念ながらわからないですね。

猫ちゃんの体質や大きさにもよるでしょうし、
その辺はもう飼い主さんの匙加減なんだろうな。

獣医さんの中では、
「開業以来イエローファットで駆け込む飼い猫は見たことがない」
と仰っている方もいました。

ビタミンB1欠乏症もバランスの良い猫のエサ時代なので
最近はそれ程見られないそうです。

これまでお話した病気は、
大量摂取した場合に起こるものです。

栄養性の病気という体内で起こる
目に見えないものでもあるため、
食事のコントロール等注意が必要ですね。

確かに
「マグロの刺身を主食にして毎日食べちゃう。」
と言うのは危険でしょう。

でもおやつにして週に1~2回位ならば大丈夫かも!
と私は思っています。

私の場合2切れを手渡しであげてました。
大量にあげて体調を崩すのも心配だったので、
様子を見ながらちっちゃくして。

食べ物はコミュニケーション

人の食べ物を猫にあげるのはいけないと言われています。

でもエゴかもしれませんが、
私自身同じ食事を時々共有することで、
「この子は家族なんだな」って感じられたんです。

家族から遠く離れて
1人で生活をしていたあの頃の私にとっては、
それが沁みるほど嬉しくて・・・。

猫と人間の関係も
食べ物を介して深まっていく気がします。

猫ちゃんの食事を手作りにしている方もいると思います。
マグロの刺身をあげる時には、バランスを考えましょう。

マグロ刺身にハマッてしまい、
他のものを受け付けなくなっちゃう猫もいるようです。

猫は自分の食事制限や健康管理はできません。
そこは飼い主さんが気を配り、
おねだりにも負けず調整していって下さいね。

まとめ

猫にマグロの刺身のあげ過ぎは要注意です。
以下の危険性が考えられます。

  1. マグロは酸化しやすい不飽和脂肪酸を多く含んでいる
  2. マグロには抗酸化作用をもつビタミンEが少ない
  3. イエローファットに罹ってしまう(①②が理由)
  4. マグロにはビタミンB1を破壊する成分が含まれている→脚気になる
  5. 寄生虫の危険性がある
  6. 水銀の過摂取の危険性がある

猫の寿命は人間と比べるととても短いです。

病気をなるべく少な目にその一生を送るためには
やはり飼い主さんによるところが大きいですね。

猫ちゃんのことを1番よく知っているのは、
飼い主さんです。

猫ちゃんの体質を理解して、
栄養バランスのよい食事を心掛けたいですね。

カテゴリ: 健康