話し言葉では、「こんばんは」も「こんばんわ」も変わりありませんが、いざ書こうとするとどちらが正しいか、はっきりわからない人が多いでしょう。
「こんばんは」と「こんばんわ」は、ちょっと面白い特徴があります。
ここでは、この2つの挨拶の言葉の意味や歴史について振り返ります。
今日から「こんばんは」と「こんばんわ」、正しい使い方を覚えましょう!
現在では、正しくは「こんばんは」
日が暮れてから、人に会ったり、人を訪ねたりした時の挨拶の言葉で、夕方5時を過ぎてから使う言葉です。この言葉を会話に使う分には気にしませんが、表記には「こんばんは」と「こんばんわ」の可能性がありますよね。どっちが正しいか悩んだことがあるでしょう。
表記するときには、現在は「こんばんは」が正しいとされています。
パソコンでは「こんばんわ」としても、「こんばんは」に自動で修正されます。
でもこれ、『現在』は「こんばんは」が正しいのです。
昔の人は「こんばんわ」
昔は「こんばんわ」と表記することもありました。というか、学校でも「こんばんわ」が正しとして習っている人もいるのです。
「こんばんは」が正しいい表記だとされたのは、昭和61年のことです。
中曽根内閣の頃に、文化庁から公示された『「現代仮名遣い」に関する内閣告示及び内閣訓令について』の中で、
2 助詞の「は」は、「は」と書く。
例 今日は日曜です 山では雪が降りました
あるいは または もしくは
いずれは さては ついては ではさようなら とはいえ
惜しむらくは 恐らくは 願わくは
これはこれは こんにちは こんばんは
(引用元:http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t19860701002/t19860701002.html)
この時から、学校でも現在の「こんばんは」の表記になったわけです。
「は」は助詞の「は」、「わ」は「和」・感動詞の「わ」
では、それまではなぜ2つの表記が存在していたのでしょうか?
「こんばんは」の語源は、「今晩はご機嫌いかがですか?」など、相手の様子をうかがう文章が略されて「こんばんは」になったという言われています。相手を思いやった言葉なんですね。
だから、「こんばんは」の「は」は、文化庁の通知にもあったように助詞に分類されるので、「は」が正しいとされたのです。
それに対して、「こんばんわ」の「わ」には諸説あります。その中でも、「わ」は日本人が大切にする「和」に通じる表記なので、挨拶の言葉にもこの「わ」が親しみやすいと使われた”という説が、私には響きました。
また、人にあった時の感動を表している感動詞の「わ」であるともいわれています。
「こんばんわ」と使うのも場面によってはOK
2つの言葉の表記の違いやその意味を知ると、「こんばんわ」は間違いだからと、完全に日本語表記から消えてしまうのも寂しい気がしますね。
今でも、どちらの表記も使われていますし、「こんばんわ」が正しいと学校で習った人もたくさんいます。だから、相手に気持ちを伝えるのが挨拶と定義するなら、場面や相手によっては、あえて「こんばんわ」を使うのもいいのではないでしょうか?
言葉は日々変化しているものですし、まだまだ「こんにちわ」は現役です。
でも、ビジネスシーンでは、正しいとされている「こんばんは」とする方がいいでしょう。
家で家族には「こんばんは」と言わない
よく考えると、「こんばんは」は挨拶の言葉でありながら、家の中では使いません。おなじことが「こんにちは」にも言えます。でも、「おはよう」とはいいますよね。
「こんばんは」は挨拶の言葉でも、家族に使うのには改まった響きが強すぎる言葉なのです。確かに、家の外では相手が家族なだけに、外での相手への気遣いほどは気を使わないものです。
そして、「おはよう」には、親しい間柄だからこそ使う、親近感を挨拶にのせた言葉なのです。親友にあった時には、「こんばんは」より「久しぶり!」とか「元気だった?」、「最近どう?」の言葉の方が先に出たりするのも、同じことなのかもしれませんね。
まとめ
挨拶の表記ひとつにも、こんな裏話がある日本語は、難しいけど自慢できる母国語です。
- 「こんばんは」と「こんばんわ」では、「こんばんは」の表記が正しい。
- 昭和61年以前は、学校で「こんばんわ」が正しいとされていた。
- 文化庁の通告で、「は」は助詞なので「こんばんは」が正しいとされた。
- 「こんばんわ」の「わ」は、「和」の意味、感動詞の「わ」と諸説あり。
- 実際には、どちらの表記も通用するが、ビジネスでは「こんばんは」とするべき。
- 「こんばんは」には、改まった響きがあるので、家の中では使わない。
実は、私は「こんばんわ」は若い人の表記だと思ってました。学校で「こんばんわ」で習った記憶はないんですよね、昭和61年より前に学校にいってたのに…。